・喫茶店『こもれび』
「彩夏ちゃん、ランチタイム最後のお客様が帰ったし、お昼にしようか」
窓際の席を片付けていた私の背中に向かい、三好さんが声をかけてくれた。
振り返ると、三好さんがレジ対応し最後のお客様の清算を済ませ見送った後のようだ。
「わーい、今日のメニューは何かなぁ」
「今日はね、チキンのハチミツマスタードサンドだよ」
「美味しそう!」
カウンターに用意されたのは、世に言う賄い飯ってやつだ。
この賄い飯も、毎回出されるメニューが違い、今では私の楽しみのひとつになっている。
夕食時の賄い飯も美味しいけれど。
ランチにつまむ賄い飯は、三好さんが淹れてくれる珈琲や紅茶などのドリンク類と本当によく合って美味しいのだ。
軽くトースターで焼いたパンにバターが塗られ、レタスを敷きちょっぴりマヨネーズがかけられグリルした照り焼きチキンが乗っている。
その上にきんぴらとハチミツとマスタードを和えたソースがかけられていた。
隣りには、淹れたての珈琲が入ったカップが、二つ仲良く並んでいる。
「いただきまーす」
少しの間だけ『close』の札がかけられているから、今この時間だけは。
三好さんと私の二人きりのランチタイム。
二人きりの時間なのだ。