・喫茶店『こもれび』
「三好さん!」
店に戻るなり、仕事をしていた三好さんを見つけ駆け寄る。
その勢いがついたまま手を伸ばし、三好さんの腕を捕まえた。
「やっぱり加納さんは、彼を待っていたんですって。知ってましたか?」
三好さんの腕を掴み「ねぇねぇ」と揺さぶりながら話す私に、若干引き気味の三好さんだったが。
そんな三好さんにお構いなしで機関銃のように話し続けた。
「彼女ですよ、彼女! さっき海岸に居た! 私が気になるからって言って、三好さんだけ先に帰ったでしょ?」
「あぁ、うん」
海で聞いた話を三好さんに報告すると、返ってきた返事は意外なものだった。
「彼女のことは、これで終わりにした方がいい」
「どうして?」
「どうしても」
なによ。理由も教えてもらえないんじゃ、余計気になるじゃん。
こんなに強引に終わらせようとしているところを見ると、やっぱり三好さんは何か知ってるんだ。
なんでそんなに秘密主義なわけ?
彼女について、何か知っているなら「こもれび」の従業員になった私にも、教えてくれたっていいじゃん。
「常連さんなんだし、今後の対応の参考にしたいのに。三好さんのケチ!」