・喫茶店『こもれび』

小さく頷いた三好さんに向かい、首を捻り返す。
「いいから、行っておいで」と手で払われ、トレイに乗せたドリンクを運んで行った。


「お待たせしました」

「どうも。あの、少し話せますか?」


ビンゴ!
「三好さん凄い、予言者ですか!」と言いたい気持ちで、カウンターに居る三好さんに目を向ける。
そんな私のことを、三好さんはずっと見守っていてくれたみたい。
いつもと変わらない、あの優しい眼差しで。


「はい。えっと、三好さんからも言われて。私の分までアイスティーを用意されました」

「そっか、さすが夏樹さんだ」


『夏樹さん』
今まで常連客から三好さんのことを、下の名前で呼んでいる人に会ったことなど無かったから。
それだけ、この人と三好さんとの仲も近しい間柄なのだろう、と感じた。


向かいの席に座ると、改めて丁寧に挨拶された。
男の名は「修」。
加納さんと同じ二十五歳。
この席から見えるオフィスに勤務しているらしい。

加納真澄さんとは幼馴染であること。
そして、加納さんが片思いしている「シュン」さんとは、兄弟だということ。
< 49 / 99 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop