・喫茶店『こもれび』


「真澄のこと、気にしてくれたんですよね? ありがとう」


修さんは知っていた。
真澄さんが店に訪れるとアイスティーを頼み、この席で長居をしていることを。


「相変わらずのルーティーンでね。さっき僕が真澄を海に迎えに行ったのも、いつものことなんだ。パターン化している真澄の行動のひとつに過ぎないんだ」


苦笑いをしながら、アイスティーの入ったグラスに口をつけた修さん。
加納さんは「三年」って言っていたよ?
ということは、この修さんも同じってことだ。
加納さんの行動に合わせ、三年も加納さんを海まで迎えに来ていたんだね。


修さんの話を聞きながら思ったのだ。
もしかして「修さんは加納さんのことを好きなのではないか」と。

けれど加納さんは、自分の弟のことを好きなのだと気づいてしまったから。
加納さんに想いを寄せながらも、気持ちを言えずにいるのかも。
好きだから離れることも出来ずに、気持ちを隠して加納さんの傍に居るのだと感じた。


「好きなんですね、加納さんのこと」

「言えないけどね」

「えー。三年も加納さんの気持ちを聞こうとしない弟さんのことなんて気にしないで。気持ち伝えて奪っちゃえばいいのに」
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