・喫茶店『こもれび』
加納さんが『こもれび』に来店し注文する「アイスティー」は、もともと珈琲の苦手な俊さんが注文していたものらしい。
「子供みたい」と笑いながら、いつも加納さんは珈琲を飲んでいたという。
そして、この席から見える景色を眺めながら将来の夢を語っていた俊さんを、愛おしそうに見つめていた加納さんだった。
「この席から見えているショップや公園なんかも。真澄にとっては俊との思い出の場所なんだ」
二人で立ち寄った花屋さんやケーキ屋さん。
ウィンドーショッピングした歩道。
公園で一休みしたベンチ。
みんなみんな、二人の思い出ばかり。
加納さんは、この席に座り窓の外に広がっている思い出を、ひとりきりで見つめているのだろう、と教えられた。
「で、あの海辺が二人にとって最後の約束の場所なんだ」
幼馴染以上になりたかった加納さんは、俊さんに素直な気持ちを伝えたくなり。
意を決し忙しかった俊さんを、あの海辺に呼び出したらしい。
多忙を極めていた俊さんは用事を全て済ませ、加納さんが待つ海辺に向かったのは約束の時間をかなり過ぎ。
深夜になってしまい俊さん自身も急いでいたのだろうが、そこへ不運が重なってしまった。
居眠り運転による赤信号無視の暴走車にひかれ、横断歩道を渡っていた俊さんは命を落としてしまったのだという。