・喫茶店『こもれび』
鼻をすすりながら、三好さんに許された禁断の(……は、言い過ぎか)扉を開ける。
少しレトロなドアノブを握ったまま、その場に立ち尽くしてしまった。
焦げ茶色を基調としていた『こもれび』の店内と繋がっているとは思えない程、別世界のような空間が広がっている。
白が基調になっていて、ポイント的なさし色には涼し気な青系色が使われていた。
リゾート地のホテルのような部屋に、驚きを隠せず思わず「うわぁ」と声が漏れてしまう。
綺麗好きじゃなきゃ住めない部屋だよ。
きちんと整理整頓されていて、掃除も行き届いている感じが一目で分かるし。
どう見ても、常に洋服が散乱している私の部屋とは大違いだ。
壁に掛けられている鏡を見つけ、歩み寄り鏡の前に立つ。
なんという顔をしているのだろう。
今までで一番のブス顔をしている自分が映り、一気にテンションが下がった。
可愛さアピールとか何も考えずに泣いたから、メイクは涙で流れ落ちてしまい、頬には涙の流れた跡が筋になっているし。
アイメイクはハンカチで拭き取られてしまっているわ、マスカラは落ちてパンダ目だわで。
「こりゃ、三好さんが部屋を提供してでもメイクを直させたいワケだわ」