・喫茶店『こもれび』
「使っていいよ」と言われたタオルを一枚借りて、洗面台へ向かい。
蛇口をひねり冷たい水を出した。
サッと洗顔し濡れた顔をタオルに埋めると、フワフワなタオルからは微かに三好さんの香りがして。
なんだか、抱きしめられているような気分になり、一気にテンションが上がってしまった。
嘘みたい、三好さんの部屋に居るなんて。
あのコップも、ソファも、いつも三好さんが使っているものなんだなぁ。
テレビボードの上に小さなパンダのぬいぐるみが置いてある、かわいい。
ちょっとコソ泥気分でタオルを頭から被り、辺りを物色……いや、見学していた。
キョロキョロしていた時間なんて、そんなに長くなかったはずなのに。
「いつまでやってるの?」と背後から声をかけられるまで、部屋の入口に三好さんが立っていると気づかなかった。
「うわぁっ」
嘘でしょ⁈ いつから居たの?
私が部屋の中をウロウロしているところを、ずっと見てたの?
やだ! 恥ずかし過ぎ!
被っていたタオルで顔を隠し、三好さんから逃げるように身を引く。
まさか、三好さんが部屋に入って来るなんて思っていなかったから、今の状況ではスッピンの顔を隠すだけで精一杯だ。