・喫茶店『こもれび』
違う、全部かな。
さっきからドキドキが止まっていない。
三好さんの部屋に足を踏み入れてからずっと……だ。
「パンダ目より酷い顔なんてないだろ」
「……酷っ! その通りだけど、ズバリ言わないで」
挑発につられ、三好さんに掴まれていた右手をタオルから離し拳を上げてしまった。
ハラリとタオルが解かれ、素顔が露わになる。
三好さんの視線が私を捉えると、私が大好きな表情をふんわりと浮かべ優しく微笑んだ。
「やっと見えた」
「やだ、見ないで」
再び隠そうとしたのに、三好さんに掴まれたままの手では思うように隠せなくて。
逆に、三好さんの右手が伸びてきて。
辛うじて顔半分が隠れていたタオルを除けられ、パサッとフローリングの床にタオルが落とされた。
「自分のことみたいに思ってくれて、ありがとう。だってさ」
「え?」
「修君、彩夏ちゃんに感謝していたよ」
加納さんのことも気にしてくれて、自分のことまで考えてくれて嬉しかったと。
そんな私と話せて、気持ちが楽になったことを伝えてほしいと言っていた、と三好さんは話してくれた。
「私、何にもしてないよ?」
「そんなことはない。彩夏ちゃんのまっすぐな気持ちは、いつも店に来てくれているお客様達にも伝わっているよ」