・喫茶店『こもれび』
「してたの! いつもより態度悪かったでしょっ」
「え? そうだっけ?」
とぼけた顔を向けてくる三好さんを見たら「この、鈍感!」なんて思ってしまった。
けれど、そんな三好さんが少し膝を屈めて同じ目線になると、やっぱりドキッと意識しちゃうんだよなぁ。
ほら、こうして見つめ合っていると三好さんの瞳に、私の姿が映っていることが分かるから。
やっぱり好きだな、と自分の気持ちを再確認してしまうだけ。
「修君が言っていたよ。『僕も真澄を元気にしたい。昔の、俊を失う前の真澄の笑顔を取り戻してやりたくなった』って」
俊さんは海辺で私と話した後の加納さんの表情から、少しだけ昔の面影を見つけたらしい。
それは加納さんが私と出逢い、前を向くパワーを感じ取ったからだというのだ。
「私、少しは加納さんの役に立てたのかな」
「彼女だけじゃないよ。修君にも十分影響を与えたよ。後ろから彼女の後を追い、見守るだけだった修君が動き出そうとしてるんだから」
三好さんの手が頭の上に乗せられ、再び『いいこいいこ』された。
なんか、含み笑いしているように見えているのは気のせいなのかな。
「……ワザと? もしかして、ワザと修さんの話を私に聞かせたの?」