・喫茶店『こもれび』
「ごめんなさい。三好さんが忠告してくれたようにすればよかった。私には、荷が重い話だった。今度からは気を付ける」
もっと、もっと簡単な恋愛話だと思ていたから。と口にすると同時に、背中に抱き着いて正解だったと思う。
三好さんの顔を見てしまったらホッとした気持ちになり、また泣いてしまいそうだから。
「ふふっ。止めはしないんだ?」
「たぶん止めることは、性格上無理だと思うから。取りあえずは、気を付けるようにする」
腰に回していた私の腕に、三好さんの手が触れ静かにポンポンと叩かれた。
『そうだね』
そう言われているみたいに、優しく感じて。
三好さんの背中に顔を埋めた。
「三好さん」
「ん?」
「あのね、高校生の頃から三好さんに憧れてたんだ」
「ありがと」
「うん。……あれ?」
ちょっと待って。
今の会話、少しおかしくない?
ずっと憧れていたことを伝えたのに、返ってきた返事が「ありがと」だけ?
あれれ? もしや、三好さんは気づいてないの?
気持ちを伝えたつもりなのに、伝わって……ない?
不安は的中した。その後、三好さんは顔色一つ変えず動揺している様子もなく。
実に冷静な言葉を私に放った。
「修君、今度は彼女と一緒に店に来るってさ」
そんなことを聞きたいんじゃないのにな。
届いていない気持ちのやり場がなくなり、大きなため息とともに「そっか」と答えた。