・喫茶店『こもれび』
加納さんに見つめられている修さんの表情が、柔らかく緩む。
そんな二人を見ている、こっちまで顔が緩んできてしまいそうだ。
「また来ます。今度来たときは、アイスティーじゃなくて珈琲を頼みます」
力強く口にした修さんの左手は、しっかりと加納さんの右手を包んでいて。
店の赤い扉を開け出て行く二人の姿が、やけに眩しく見える。
ちょっと(いや、かなり)羨ましく思えてしまった。
「またのお越しをお待ちしています」
二人の背中に声をかけ、振り返った私を見ていた三好さんは「落ち着くべきところに落ち着いたようで、良かったね」と言い、フワリと微笑んだ。
次は、私の番なんだから!
ビシッと三好さんに向け、指をさす。
そんな怪しげな仕草に、三好さんは首を捻って背中を向け仕事を再開してしまった。
歳が離れていようが、好きなもんは好きなんだから。
絶対に振り向かせて見せる。
「三好夏樹! 覚悟っ」
「何をだよ」
速攻でツッコまれたのに、嬉しいなんて。
やっぱり私は、三好さんが好きなのだ。と実感する。
「お節介も、役に立つことがあるんだね」と笑う私を見つめてくれている三好さんの視線が、今まで以上に柔らかく優し気に見えたことは、気のせいではないと思いたい。