・喫茶店『こもれび』
カフェモカ
(1)
「三好さん、これでいいの?」
「うまいうまい」
カウンター内で、美味しいコーヒーの淹れ方をレクチャーしてもらっているけれど。
店内には二人きりだということが嬉しくて、さっきからウキウキしている。
「出来た! 飲んでみて」
「えっ」
淹れたての珈琲が入っているカップを、三好さんの前に差し出したのに。
一瞬怯んだのは何なんだ?
もしかして、マズいことを予測したうえで飲みたくないのか?
「なんで嫌そうな顔してるの? 絶対美味しいから、飲んでみて!」
渋々私の手からカップを受け取った三好さんは、恐る恐るカップに口をつけた。
「どう? 美味しいでしょ? どう? どう?」
「……」
「なんで何にも言ってくれないのよ。感想言ってよ」
「……自分で試飲してみたら?」
そんなにマズかったのかな。と三好さんの持っているカップに口をつけ、珈琲を口に含む。
「うげっ、何これマズッ」
「ドンマイ」
「ううっ。やっぱり美味しい珈琲淹れるのって、見ているよりずっと難しい」
「そんなにスグ作れるようになられちゃったら、俺の店潰れちゃうよ」
あははっ。と笑っているけれど、三好さんはガッカリしてため息をついた私の頭を優しく撫でた。