・喫茶店『こもれび』
こういう時って、素直に答えた方がいいのだろうか。
それとも「所々聞こえた」と、適当にかわした方がいいのだろうか。
うーん。正解が分からない。
「黙っている所を見ると、かなり前から聞いてた?」
的を得られてしまい、ますます答えられなくなる。
いつもは鈍い位、気付いてくれないくせに。
どうしてこんな時ばかり、的確に言い当ててくるのかな。
などと思ってみても、反論さえできないくらい立場的には悪いのだ。
この際、ひたすら謝るしかないよね。
「なんとなく気になってしまって。つい出来心っていうか、あの……」
「ふふっ」
三好さんと向かい合い、必死に言い訳している私の姿が可笑しかったのか。
客席に座っていた彼女が、口元に手を当て噴き出したのだ。
彼女の笑い声に反応し、三好さんと二人同時に彼女を見下ろした。
「あ、ごめんなさい。私、篠原麻衣(しのはらまい)っていいます。あなたが気になっているのは、夏樹と私の関係……よね?」
さっき同級生だと伝えたことで、私の気持ちを乱してしまったのだろう。と口にした彼女は、優しげな笑顔を私に向けた。
まるで、いつも三好さんが私に微笑みかけてくれる時と同じように。