・喫茶店『こもれび』
「この店に来たのは偶然じゃない。夏樹がどうしても喫茶店を続けたいというのなら、それでも構わないと思ってる。お金の面は、心配しなくていいから」
「麻衣?」
「私、仕事で評価されてね。今は結構重要なポストにつけているの。お給料も、役職に見合ったくらい貰っているし。夏樹と二人で生きて行く位は稼げているから大丈夫よ」
明るく話す彼女に向かい、三好さんの表情は次第に曇っていった。
その変化に気付いていないのか、彼女は話を続けている。
三好さん、もしかして彼女に養われるような気がして嫌なのかな。
でも口出しする内容じゃなさそうなことは、分かるし。
もしも私が考えていることが当たっているのなら、彼女の印象が悪くなるのは確実だろうし。
そうなれば、三好さんの彼女への気持ちが変わるかもしれない。
私にもチャンスが回ってくる可能性を取るならば、彼女の気が済むまで話させておいた方がいいのかな。
心の中で「いい私」と「悪い私」が葛藤している。
少しでも三好さんの心の中に入り込めるならば、選ぶのは「悪い私」しかない。
けれど、本当にそれでいいのかな。