・喫茶店『こもれび』

「そういうことじゃなくて……」と言いかけた三好さんの言葉を遮り「何か問題? 私達が別れたのだって、元々は喫茶店の売り上げだけで生きていけるのか、将来に不安を覚えたからじゃない」と、捲し立てるように彼女は気持ちをぶつけていた。


もうやめればいいのに。
三好さんが困っているじゃない。
どうして気付かないの?
それとも、気づいていながら気付いていないふりをしているの?


「麻衣、その話は改めて……」

「聞いてよ! このままじゃ、私は社長の息子と結婚することになっちゃうのよ」


彼女の言葉に、三好さんも私も驚きを隠せず。
その場に立ちすくんでしまったのだ。


彼女の仕事ぶりを見込まれ、社長から御子息との結婚を薦められているのだという。
単純に考えれば、玉の輿だ。
なにも迷うことなど無いのは明白なのだろう。

けれど、彼女の心には三好さんがずっと居たのだ。
忘れられない気持ちを伝えに、三好さんの気持ちを確かめるなら今しかないと思い、勇気を出して三好さんの元へやって来たらしい。


「もしも、夏樹もまだ私のことを想ってくれているのなら。私は……」

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