・喫茶店『こもれび』
胸が苦しくなっているのは、彼女の気持ちが私と同じだと感じているからだ。
三好さんが好きで、傍に居たくて。居てほしくて。
「好き」とか「愛してる」とか、ハッキリするような言葉で三好さんの気持ちを聞きたいのだろう。
「夏樹、私達もう一度やり直そうよ」と口にした彼女を見つめている三好さんの目が、私に向けられていたものとは違うことに気付いてしまった。
せつなそうな目で彼女を見ているから。
それだけで、どれだけ三好さんが彼女を大切に思っているのかが伝わってきてしまうなんて。
しかし、三好さんは彼女の肩に手を置き「ごめん」とひとこと告げたのだ。
その言葉が、彼女にも私にも予想外としか思えず。
ほぼ二人同時に三好さんを見上げてしまった。
「夏樹? どうして? だってさっき夏樹も……」
「麻衣のことを忘れられなかったのは本当だ。けど、あの頃と同じ俺じゃない」
「それってどういう意……。もしかして、付き合っている人がいるの? それとも、もう誰かと結婚……」
「あぁ」
そう答えた三好さんは、彼女の肩から手を離し背を向けた。
と同時に、その手は私の背中に添えられたのだ。
「彩夏ちゃん、仕事に戻って」