・喫茶店『こもれび』
彼女を追いかけようと出口に向いていた足のつま先は、無意識に三好さんへと向き替え。
カウンターの中に入り、三好さんのシャツの裾を摘みツンツンと何度か引っ張った。
「彩夏ちゃんは、俺が麻衣と元に戻った方がいいと本気で思ってる?」
シャツの裾を引っ張られた三好さんは、振り向きもせずに呟いたのだ。
正直、ドキッとした。
このタイミングで、まさか三好さんから私の気持ちを確認されるなど、思ってもいなかったことだから。
突然の質問に、すぐに答えられない私に気付いたのか。
三好さんは身体を反転させると、向かい合った私の顔を覗き込んだ。
少し前かがみで覗き込んだりして来るから、当然目の高さが同じになり。
しっかりと視線がぶつかったまま、動けなくなる。
胸の鼓動だって、複雑な気持ちを抱えているくせに、しっかり高鳴ってしまったりしていて。
元サヤになんて、戻ってほしいわけない。
素直な気持ちが溢れ出てきてしまう心を鎮めたい。と思いながらも、出来る自信が無くて。
グッと奥歯を噛みしめ口を噤んだ。
「彩夏ちゃんには全部バレてるんだよね? 俺が麻衣に嘘をついたこと」