・喫茶店『こもれび』
「気になる?」
「へ?」
「俺に付き合っている人がいるかどうか」
「……そりゃ、まぁ。一緒に働いている身としては、ね」
ちがーう!
好きなんだから、気になるのは当たり前なのっ。
「付き合っている人なんて、いないよ」
ホッと胸を撫で下ろした私は、まだ少しだけ残っている可能性にかけるチャンスを与えられたような気がした。
「好きな人なら、いるけど」
「は……い?」
気分は一気に、奈落の底に転落した。
要するに、好きな人はいるけど。
まだ、三好さんの気持ちを伝えていないから、その人と付き合っていないってことか。
結局、失恋じゃーん!
「そう、なんだ? へぇ……そっか。そうだよね、うん」
考えてみれば、三好さんにだって好きな人位いるはずだよね。
いい大人が「恋愛してませーん!」なんて言ったら。
逆に何かあるのかな、なんて勘ぐっちゃうよ。
私でさえ、日々の只ならぬ色気を三好さんから感じている位なのだから、大人の女性ならば当然三好さんの素敵さに気付いているだろうし。
三好さん自身、狙っている女性がいてもおかしくない。
どうしよう。
まともに三好さんが見れなくなっちゃった。
今、三好さんを視界に入れたら。
絶対に泣ける自信がある。