・喫茶店『こもれび』


項垂れるように頭を下げ、顔を突っ伏すと。
「ゴチン」と鈍い音をたて、カウンターに額をぶつけた。


「どうした?」

「……どんな人?」

「ん?」

「三好さんの好きな人って、どんな人? もしかして常連さんの誰かで、私が知ってる人とか?」

「……うん。いい勘してるね」


ずーん、と全身が重く感じたのは気のせいじゃない。
あまりに突然のショックを受けて、立ち直れそうにない。
三好さんの声まで、何だか遠くに聞こえるみたいに感じている。


「どんな人、かぁ。うーん。明るく元気が良くて、いつも前向きに頑張っていて。彩夏ちゃんもよく知っている人……かな」


うわぁ、墓穴掘っちゃった。
聞かなきゃよかったー!


突っ伏している私の頭上に、三好さんの指先がツンツンと突っついてきて。
「誰か聞かないの?」なんて、軽く口にするから。
じわりと目頭が熱くなり、涙が止められなくなっていた。


「確かに、店が起動に乗ったら麻衣を迎えに行こうと、当初は考えていたんだ。けど、月日が経つうちに、そんなことも薄れていった。ただ麻衣に対しては、申し訳ない事をしたって気持ちだけが心残りでさ」

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