・喫茶店『こもれび』
そう言って、はにかんで私を見つめている三好さんの笑顔が。
今までで見てきた笑顔の中でも、一番可愛く見えた。
頬に触れていた指先が、額へと移り。
人差し指でチョンと突かれた。
「ちゃんとドキドキしているよ、この子に」
「三好さ……」
肉厚の唇から発せられた言葉は、確かに私に向けられたもので。
垂れ目の瞳に映っているのは、確かに私だけ。
それを確信した途端、引っ込んでいた涙が溢れてきてしまい。
みるみるうちに、三好さんの顔がぼやけてしまった。
「いちいち感じてたよ。好きって気持ちやしぐさ、表情も。彩夏ちゃんの全部が、俺を好きだと伝えて来てたこと」
気を引こうとしていたことも、好きって気持ちも。
ちゃんと気づいてくれていたの?
ワザと鈍感なふりをしていたってこと?
「でも、もし同年代の男に恋をしたら。俺への気持ちは、年上への憧れみたいなものだったと気付いて。いつか俺の元から離れていくと思った。その日が来たら、笑って送り出すことができるだろうか、と考えたら怖くなったし。一度手にしてしまったら、手放すことなんて無理だと思った」