・喫茶店『こもれび』
だから、三好さんは敢えて気持ちに蓋をして。
私の気持ちに気づいていないふりをしていたのだと。
手放すことが出来なくなるのなら、いっそ気持ちを伝えなければいい。
始めなければいい、と考えていたのだと。
「そんなこと、あるわけない!」
私が好きなのは三好さんなのに。
三好さんしか好きじゃない。
今も、これからも。
頭に乗せられている三好さんの手を逃がさないように、両手を頭上に伸ばし三好さんの手首をギュッと握る。
そんな私の行動に、驚きを隠せなかったのは三好さんだった。
怯むような素振りをして、頭に乗せられていた手が一瞬離れたが、すぐに元の場所に戻って来た手に、優しく頭を撫でられた。
「気持ちを上手く表せない俺とは、反対の彩夏ちゃんが眩しくて。素直になれなかった」
「眩しかったのは三好さんの方だよ。私はいつもひとりでドキドキしてたんだから」
嬉しさでいっぱいになり、これが夢なのか現実なのか分からなくなっている私は。
掴んでいる三好さんの手首から伝わる脈拍を感じ、これが現実なのだと実感した。
「……彩夏ちゃんが思っているより、ずっとずっと君のことが好きだよ」