副社長のイジワルな溺愛

「これから客先の社長が来ることになった。いつも不在時は部屋をロックしているから、俺が出たら内側から施錠して」
「かしこまりました」
「作業が終わったら経理室に戻るだろうから、その時もこのカードで施錠するように」
「カードはどうやってお返ししたらいいですか?」
「次に会う時でいい。深里さんは間違ったことをするような人ではないと信用しているからね」

 役職者だけに渡されていると噂を聞いたことがある、黒いカードキーのスペアを渡されて手が震えそう。
 信用していると言われたら、絶対に間違いが起きないようにしなくてはと気を張る。


「――副社長、永井ホールディングスの永井CEOが到着されました」

 ドアの向こうから秘書が声をかけてきて、社長はすかさず私に黙っているように指示をする。
 どうして私がここにいることを隠すのかと疑問に思いつつ、再び口を閉ざす。


「分かった、ありがとう。特別応接室を使わせて」
「支度は整っております」
「さすがだね。今行きます」

 手帳とPC、ペンを手に副社長がデスクを離れようとしている。


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