副社長のイジワルな溺愛

「来週から二週間、海外出張で不在します」
「はい」
「その間、経理業務は発生しないだろうから、ここには来なくていい」
「かしこまりました」

 副社長は私と視線を交わさずに話すけど、私は忙しそうにキーボードを叩いている彼の長い指を見つめる。

 節がなくて、まっすぐ伸びた指が綺麗だと思った。
 そういえば銀座に行った日、不意に繋がれてドキドキしたんだっけ……。


「何か俺に言いたいことでもあるのか?」

 私の視線に気づいた彼に一瞥され、鋭さのある目つきに息を飲む。
 どんなに接しても、副社長にはなかなか慣れないなぁ。


「先日いただいたお釣りで、検定の問題集を買い足しました」
「そうか。勉強は進んでるのか?」
「あまり自信はありません。結構難しくて」
「そうだろうな、二級に挑む意気込みだけは褒めてやる」


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