副社長のイジワルな溺愛
あと半月もすれば、試験当日を迎える。
いくら勉強しても、元から数字は苦手な方だし、過去問をやってみても得点配分の高い問題ほど自信がない。
「俺がいない間も、“自分磨き”の手を休めることなく、勉強も頑張りなさい」
「はい。ありがとうございます」
副社長なりに、倉沢さんへ片想いを応援してくれているんだろう。
この前だって、噂になって肩身が狭いことも察してくれたし、できることはないかと気遣ってくれた。
副社長が不在する二週間の間で、噂なんて消えてくれたらいいのに。
業務をひと通り終えると、副社長がコーヒーを淹れてくれた。
「ミルクでよかったよな?」
「はい。ありがとうございます」
副社長の自宅に行った時、ミルクだけを入れていたのを覚えていてくれたようだ。
さすが人の上に立って指揮をとる人は、こうした小さなことも見逃さない。取引先との会話はもちろん、相手の仕草をよく見て、自社の有益に貢献できるよう、いつも考えているのだろう。