副社長のイジワルな溺愛
「別のフロアで会議してて、経理か会計に誰かいないかなって来てみたんだけど」
香川さんのデスクチェアを引っ張って、彼が隣に座った。
「みなさんいつの間にか帰られてたみたいです」
「いつの間にかって、深里さんよっぽど集中してたんだね」
「はい。気づけばこの時間でした」
そう言うと、彼は私が机上に広げている資料を見て、納得した様子だ。
「それ、深里さんが担当してくれるんだね。比較的規模が大きいから、大変だと思うけど頑張って」
「はい! ここまで大きいプロジェクトに関わるの、実は初めてなんです。だから気合入っちゃって」
「だから、手にペンの跡ついてるのか」
「え?」
手首を帰して小指側の側面を見ると、黒や赤、青の色が混ざって移っていた。