副社長のイジワルな溺愛

《それで、どうして電話してきた?》
「っ……それは、あのっ……」

 一層大きくなる鼓動の音が、言葉を詰まらせる。
 副社長が私を好きなんてあり得ないし、私も副社長に恋はしていないはずなのに。


《まぁ、いい。じゃあ、また》
「お、お疲れさまでした……」


 終話音が聞こえて、大きく息をつく。

 ホッとしたことに違いはないけど、副社長と初めて接したあの日とは違う安堵に気づかされた。



 私が倉沢さんと上手くいくよう、背中を押して応援してくれていた副社長の優しさをこの目で見てきた。

 試験も受かるといいと思ってくれている。


 だから、一瞬よぎった考えはきっと間違いだ。
 副社長が私を好いているなんてことは、百パーセントないと思う。


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