副社長のイジワルな溺愛

 ――九月二週目の日曜。

 受験を終えて、会場を後にする。
 手ごたえはあまり感じられない。全部初めて見る問題に感じてしまうほど緊張していたし、他の人の筆記音に急かされてしまう時もあった。


 落ちたらどうしよう。
 倉沢さんに謝らなくちゃ。仕事終わりで疲れてるのに、親身に教えてくれたあの時間を生かせなかったのは、私の努力不足だ。


 副社長には、思っていた通り無謀だったなって笑われるんだろうな。
 合格発表は十一月。その頃にはきっと秘書のサポートも終わっているかもしれないけど。



 結果はまだわからないけど、お礼に食事に誘ってみよう。
 試験が不合格でも、恋愛は自分で上手くいくようにするしかないんだと思うから。


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