副社長のイジワルな溺愛

 ――見てはいけないものを見た。

 副社長が結婚しないのは、男性が好きだから!?
 あんなに恵まれているのに、浮いた話が多くないのは……つまり、そういうこと!?


 信じられない現実に目を逸らすこともできず、ただ茫然と彼らが車に乗って去っていくのを見つめているしかなかった。



 勘違いだと気付けてよかった。
 自惚れを口にしなくて助かった。


『俺の女になりたいなら、それなりに魅力を磨け』

 あの言葉の意味を知りたいと思っていたけれど、きっと深い意味はなかったのかもしれない。

 酒席で言われたし、その夜はお店の不手際で彼も気が立っていた。
 初めて笑った顔を見て、すごく記憶に残っているけど……副社長はきっと女性と結ばれることを望んでいないのかもしれない。


 今日見たことは、他言無用。
 もちろん副社長本人にも伏せておこうと思う。

 私が今まで誰とも経験がないことを言いたくないのと同じように、彼にだって秘密はあるはずだから。


< 151 / 386 >

この作品をシェア

pagetop