副社長のイジワルな溺愛

 副社長はゆっくり立ちあがり私の隣に立つと、デスクに右手を突いた。


「……なんですか?」
「…………」

 私の問いかけを無視して、彼は少しずつ距離を縮めてくる。

 見上げている私を覗き込むように、ゆっくりと。


 副社長の魅惑的な瞳に私が映りこんで、自分だけ見つめられていると知ったら、ドキドキと鼓動が鳴り出した。
 徐々に大きくなる音と共に、彼の瞳の中の私も大きく映りこんで……。


「あの……っ」
「…………」

 コーヒーカップひとつ分の距離まで迫られて、鼓膜を震わす自分の心音に聞き覚えがあると気付いた。

 副社長に電話をした夜、ドキドキして鳴り止んでくれなかったあの音と同じだったから。


 思わず呼吸を止めると、彼が私の顎先に指をかけ自由を奪った。


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