副社長のイジワルな溺愛

 副社長からもらったカラフルな缶に入ったバームは、恋のお守りにした。

 倉沢さんに断られてしまうかもって、考え出したらきりがない。
 でも、誘わないと何も変わらないんだと思う。

 前向きに思えるようになったのは、副社長が背中を押してくれるから。
 倉沢さんに試験勉強を見てもらって、以前よりもほんの少し近づけた気がしたから。


 彼の気持ちは目に見えない。

 でも、今まで顔を合わせたら話してくれた朗らかな彼の雰囲気が好きで。

 食事に誘ってくれた日、追いかけてきてくれた彼の真剣な顔がずっと鮮やかに残ってて。

 勉強を見てくれた時、ハイタッチをしてくれた時の温もりと彼の笑顔が忘れられなくて――。


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