副社長のイジワルな溺愛
「あの、申し遅れました。私、御門建設の経理担当で、深里と申します」
「……御門建設様ですか?」
私の服装が悪かったのだろう。
副社長が使っているお店なのだから、社名を知らないはずはない。
それに、前髪のある黒髪ストレートは幼く見られることもあるから、社会人なのか疑われているのかもしれない。
「実は、先日発行していただいた領収書を差し替えていただきたく参りました」
「はい」
リュックサックを背中から前に回し、ファスナーを開けてクリアファイルに挟んできた社名入りの封筒を取り出した。
「こちらなのですが」
「……確認してまいりますので、少々お待ちください」
店員は封筒を受け取ると、そのままレセプションの後ろにあるドアの向こうに入っていった。