副社長のイジワルな溺愛
「深里さん、お疲れさまです」
「お……お疲れさまですっ!」
挨拶をしただけで、胸がいっぱいだ。
今日は目が合ったとか、挨拶してもらえたとか……そういう小さな出来事が私にとってはすごく大切で。
「それではまた!」
不思議そうに見ている彼らの横を通り過ぎ、屋内に渦を巻く非常階段を駆け下りて逃げた。
どうしよう。変に思われてないかな。
この後、お誘いのメールを送ったら、どう思われる?
好きな人ができたのも高校生以来、男性を誘うのも生まれて初めての経験。
やったこともないのに、思い切って話そうなんてハードルが高すぎたと今さら気づく。
十七階の経理室。
駆け下りて乱れた髪に指を通して直し、自席に座って呼吸を整えた。