副社長のイジワルな溺愛
三分ほどすると、店員が出てきた。
「確かにこの日、ご来店いただいていたようですね」
「はい」
「大変失礼いたしました。ご足労いただいてしまい申し訳ございません。ただいま正式なものをご用意しますのでお待ちください」
店員と話していると、甘い匂いの香水を漂わせ、セレブのようなドレスを着た女性がやってきた。
「こんばんは。あなた、入店するの?」
「いえ、私は会社の遣いで参りましたので」
「会社? どちらの?」
「御門建設です」
私が社名を告げると、その女性はくっきりと化粧を施した目元を大きく動かして、驚いた様子で私に一歩近づいてくる。
「御門副社長、お元気ですか? 先日来ていただいたので、ぜひよろしくお伝えくださいね」
「あ……はい、申し伝えます」
よろしくって、どう伝えればいいんだろう。
それに、領収書さえ差し替えてもらえればいいのだから、できるだけ副社長とは関わりたくない。