副社長のイジワルな溺愛

 飲み始めて一時間半。
 向かい側に座っている彼に何度も見惚れ、私の話もちゃんと聞いてくれる彼に、一層心が奪われた。


 倉沢さんは好きな人がいると言っていた。
 私と同じくらいの身長の、知らない誰か。
 それが私だったらいいなって、今日まで何度思っただろう。

 そんなはずはないって言い聞かせるほど、期待して願ってしまう。
 片想いでもいいなんて、本当は思ってなかったんだなって今になって自覚した。


 だって、こんなにも近くにいてくれて。
 手を伸ばせば触れられるこの距離が、恋を後押ししてるみたいで。



「倉沢さん」
「ん? あれ、酔った?」
「まだ、ほろ酔いです」
「俺も」

 いま頬が赤いのは、お酒のせいじゃないと思う。
 もう告げてしまいたいと思った、私の恋の熱のせい。


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