副社長のイジワルな溺愛


 彼が取り分けてくれた赤身肉を食べ、咀嚼して飲み込み、ふぅっと息をついて顔を上げた。


「あのっ」
「どうしたの? すっごい顔赤いけど」
「……笑わないで聞いてくれますか?」
「面白い話だったら、笑っちゃっても許してくれる?」


 面白い話になるといいな。
 いい思い出にしてもらえるかな。

 泣きたいくらい好きなのに、上手く笑って告白しようとしてるから、今の私はきっと複雑な表情をしてしまっているだろう。



「好きです」
「……肉が?」
「お肉も好きですけど」
「俺も、ここの肉はすごく好き」

 同じように小皿に取り分けた赤身肉を頬張って、「うまっ」と言いながら食べる彼を見つめる。



「私は……倉沢さんが大好きです」


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