副社長のイジワルな溺愛
「深里さんのことは、好きだよ。それが恋かどうかって言われたら、ちょっと違うかもしれないけど……。ただ、こんな俺を好きでいてくれたのは、すごく嬉しい。ありがとう」
「……お礼なんて言われるようなことしてないです」
彼の困った表情を初めて見て、なんだか辛くなる。
感謝されたくて、告白をしたんじゃないのに……。
「前に、好きな人がいるって言ったでしょ? その人のことも諦めたんだ。マレーシアに連れていけるような関係でもないし、帰国が五年先の予定だから付き合ってほしいとは言えなかった」
黙って聞いている私に、ひと言ずつ選んで優しく話す彼が、切なそうに微笑む。
きっと失恋するのに、私まで悲しくなって……涙がこぼれた。
「だから、深里さんに待っててなんて言えない。それまで好きでいてなんて、繋ぐようなことは言えないんだよ」
何度も、ごめんって謝るから。
無理に微笑んでくれるから。
好きで好きで、まだこんなにも好きで……。