副社長のイジワルな溺愛
帰りは、お店の前で別れた。
彼に背を向けて、踏み出したら涙があふれて止まらなくなった。
「……好きなのに」
こんなに好きになった人は、これから先も現れないんじゃないかって思える。
倉沢さんが笑ってくれると嬉しくて。
倉沢さんに会えただけで、その日一日が幸せなものに変わった。
彼がいてくれたから、仕事も好きだった。
彼がいる会社にいられるのが、誇りでもあった。
大きな仕事を任されて、誰からも慕われている彼に憧れて。
帰宅して、靴も脱がずに玄関に座り込む。
止まらない嗚咽を腕の中に閉じ込めるように、膝を抱えて俯いて、たくさんの涙を落とした。