副社長のイジワルな溺愛

「失礼します」
「――どうぞ」

 少し間が空いてから返事が返されるのは、副社長が誰かと通話しているときだ。
 ドアを押して入ると、やっぱり携帯を耳に当てていた。


 指を差された彼のデスクの傍らに、今日の分の経理書類。
 そっと椅子に座って、早速作業を始めた。


「――永井社長なら、そちらの案を選ばれると思っておりました。弊社としましてもそちらの方がより良いと思っております」

 得意先である永井ホールディングスのCEOと話しているらしく、デスクに広げた大きな図面を見ている横顔が凛々しい。


「かしこまりました。ではまた後日、よろしくお願いいたします」


 通話を終えた彼は、すかさずPCで作業を始め、携帯で設計にかかわる各部署の上役に連絡を入れた。


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