副社長のイジワルな溺愛
「副社長は、何を食べたい気分ですか?」
「俺は、君に聞いているんだ」
「……後悔しても知りませんよ?」
「言ってみろ」
「イタリアンです。それも、私が食べたことのないような」
倉沢さんを思い出しても、笑って前を向いていられるような、強い自分になりたい。
美味しいものを食べて、明日からの力に変えて……早く立ち直らなくちゃ。
「お安い御用だな。今日は酒を飲むから、タクシーに乗ろう」
副社長がロータリーに列を成していた先頭車両に合図して、私を先に乗せてくれた。
「白金高輪の駅の方へ向かってください」
「……!!」
彼が運転手に告げた行先に、早速後悔する。
高級住宅街にある店なんて行ったこともないし、私は場違いなんじゃないかと不安になった。