副社長のイジワルな溺愛

 二十分ほどタクシーを走らせ、彼が店までの詳細なルートを案内し、程なくして到着した。


 店内はすでに満席だったけど、入ってきた私たちを見るなり黒いエプロンをした店員が笑顔でやってきた。


「こんばんは。御門です」
「ようこそいらっしゃいました。どうぞお二階へ」

 案内された二階はテーブル席が一つだけで、私たちのほかに誰もいない。
 


「副社長の行きつけですか?」
「俺の幼馴染がやってるんだよ。二階は特別席みたいなもんだな」
「……いいんですか? 私なんかと一緒で」
「君がイタリアンがいいと言ったから連れてきただけだ。ほら、好きなものを何でも頼みなさい」

 広げて渡されたメニューには、行ったことのある店とは比べ物にならない価格が並んでいる。


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