副社長のイジワルな溺愛
「今日は無礼講でいい。最後までつきあってやるから」
「……ありがとうございます」
「俺の優しさに感謝しろよ?」
ビーフシチューを食べてワインを飲むと、彼はバッグから煙草を取り出した。
「そっちに煙がいかないようにするから、吸っていい?」
「どうぞ」
副社長が愛煙家とは知らず、火を点けて吸う仕草を見つめてしまう。
「……なに?」
「煙草、吸われるんだなぁと思って」
「仕事のスイッチが入っていれば吸わない」
「……ってことは、今は」
悲しい気持ちは変わらないけど、副社長と話している間に、気付けば涙も止まった。
彼がいつになく優しくて微笑んでくれるから、落ち込んでいても心がホッとする。
「礼を兼ねた、デートみたいなもんだろうな」
「で、デート!?」
「不服か? 相手が俺では足りないとでも?」
途端に冷たい表情を浮かべているけど、その瞳はとても優しい。
魅惑的で、私のことなんてお見通しとでも言いたそうな強い眼差しが、鼓動を動かす。