副社長のイジワルな溺愛
「デート、したことないとか?」
「……付き合ってなくてもいいなら、ありますけど」
「あぁ、ごめん。思い出させたな」
倉沢さんと食事をした最後の日をまた思い返していると、副社長は煙草を吸いながら私を見つめてくる。
いつまでも傷心を引きずったって、何も変わらないのは分かってる。
でも、好きでいた時間が長いと、こんなに深く落ち込むんだってことを知った。
「副社長、私にアドバイスをしてくださってありがとうございました」
「……礼なんていい」
「そういうわけにはいきません。前よりも少しは自分に自信を持てたような気がするんです」
「俺は、女が泣いているのも見ていられないし、自信なさそうに俯いているのが放っておけないだけだ」
彼はグラスに残っていたワインを飲み干すと、もう一本煙草を取り出して火を点けた。