副社長のイジワルな溺愛

「でも、副社長は女性より男性のほうが」
「……どういう意味だ?」


 副社長ほどの人なら引く手あまただろう。
 綺麗な人も可愛い人も、どこかの令嬢だって選べる。

 だけど、見てしまったから……。副社長が男性と抱き合って嬉しそうに、耳元で話していたのを。


「駅前で、男性と……その」

 口ごもった私に向けられる怪訝な表情。こうしてかわいがってもらうまで見てきた、印象通りの彼の顔だ。
 こうして間近で見ると目を合わせていられなくて、今度は自ら視線を下げた。


「抱き合ってましたよね?」
「……そうだな。大切な人だ」
「言うべきではないと思っていたのですが、すみません」
「構わない。君の勘違いだからな」
「えっ!?」

 下げたばかりの視線を上げると、口角を綺麗に持ち上げて微笑む彼と目が合った。


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