副社長のイジワルな溺愛
「海外の客先だ。挨拶程度のハグくらいは応じる」
「……そうだったんですね」
ホッと胸を撫で下ろすと、副社長が腕を解いた。
「ちょっと考えれば分かりそうなものだが……君らしい誤解ではあるな」
「失礼しました」
「ところで、俺も聞きたいことがある」
「はい」
「君は、ずっと俺に抱きしめられていて平気なのか?」
ゆっくりと上体を起こし、私を見下ろす彼が馬乗りになった。
生まれて初めての光景に、再び心臓が飛び跳ねる。身体中を駆け巡る血液は熱いのに、指先は緊張で冷たい。
「俺はいくら立場があっても、こんな状況で何もせずにいられない気分だ」
「副社長?」
間を置くことなく、あっという間に距離がなくなって。
鼻先が付きそうな距離から魅惑的な視線で見つめられたら、際限なく頬が熱を持っていく。
まるで、副社長にキスをされるようで――。
「好きでもない女に、こんなことはしない」