副社長のイジワルな溺愛
――十八時過ぎ。
秘書室の前を足早に通りすぎ、副社長室のドアをノックした。
「どうぞ」
いつもと変わらぬ声色の返事が返され、ゆっくりドアを押し開けた。
「君か。お疲れさま」
「お疲れさまです。あの……ご用件はなんでしょうか?」
「用件? 特にない。君と二人きりで会いたかっただけだ」
彼はPCや資料を見て忙しそうに仕事をしながら、いかにも当然のように言う。
ペンを置いて傍らのコーヒーを飲んだ彼は、ハイバックチェアに大きくもたれて私を見つめた。
「答えは出た?」
「えっ!?」
「覚えていないとは言わせない。この前、俺は君に想いを告げたんだからな」
恥ずかしげもなく堂々と話す彼の瞳は、今日も私を貫く。