副社長のイジワルな溺愛

「……まだです」
「そうか」
「すみません」
「謝るな。振られたみたいだろ?」

 不意に微笑まれて、胸の奥が騒ぐ。
 ドアの前から動けずにいる私の前まで、おもむろに立ち上がってやってきた彼は、指一本触れることない。

 でも、長身から見下ろされて、自然と私は上目遣いになってしまった。


「可愛いな、君は」
「っ!!」

 私の手を取って、部屋の奥へと戻っていく彼は、ソファに私を座らせた。


「すぐに終わるから、少し待っててくれないか。食事に行こう」
「あの、それは」
「俺の誘いに、文句はないよな?」


 強引に誘ってくる彼に反論もできず、ただ頷いてしまう。

 副社長のことがあんなに苦手だったのに、今は嫌だと思うことも怖いと思うこともない。


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