副社長のイジワルな溺愛
「私がこのような服装だったからだとは思いますが、御門建設の者と申してもすぐに信じていただけず、入店を断られてしまいまして……申し訳ありません。明日からはもう少し服装にも気を配ります」
客先と面会する営業や広報の社員はいつでもスーツを着ているかジャケットを羽織っているけれど、制服がない分、私はオフィスカジュアルで働いている。
私が着飾っても意味などない。しいて言えば、倉沢さんに褒めてもらえるかもしれないことくらい。
でも、いつ会えるともわからないのに日々気合を入れるのは疲れるから、着心地のいい楽な服装で仕事をした方がいいと思っているだけ。この方が私らしいとも思うし……。
副社長には、調子よく明日から気を付けると言っても、現実にはそんなすぐに服を買い揃えられない。
ここはひとまず、反省しているとだけは知ってもらっておいた方がいいと思った。