副社長のイジワルな溺愛
「あ、そういえば……」
バッグに入れてきた黒いカードキーを取り出し、デスクにいる彼に差し出した。
「副社長、こちらお返しします。遅くなって申し訳ありません」
「返さなくていい。それは君が持っていなさい」
「えっ? でもこれは役職者だけが持っているものですので」
それに、もう秘書のサポートも終わったから、ここへは余程のことがなければ来れないはずで。
「君だけは特別、俺が許す」
突き返されたカードキーをバッグに戻し、ソファでおとなしく待つ。
副社長の想いを知ったせいで、前みたいに言い返せなくなった。
今までなら、勝手な約束をされた今日のような日は、待たずに帰っていたかもしれないのに。