副社長のイジワルな溺愛
車寄せまでは、意識して距離を置いて歩いた。
彼は気にしていない様子だったけど、やっぱり明日からのことを考えると慎重になってしまう。
「横浜まで行ってください」
タクシーの運転手に彼が告げた行先に、私は驚いた。
「君の家が近い方がいいだろう。ちゃんと送るから安心しなさい」
「……はい」
「何が食べたい?」
「何でもいいんですか?」
ちらりと私を見遣って、彼が頷く。
「焼肉がいいです」
「わかった。……運転手さん、首都高で元町の方に行ってください」
「かしこまりました」
想いを告げられてから初めてのデート。
落ち着かなくて車窓の向こうに視線を逃がし、言葉少なに到着を待った。