副社長のイジワルな溺愛

「茉夏は? どんなご家庭で育ったの?」
「私ですか?」
「茉夏のことを知りたい。もっと深く好きになりたいから」

 彼がテーブルに置いたグラスの中で、溶けて少し小さくなった氷がからんと鳴った。


「私は……普通の家庭です。一人っ子だったから、父も母もちょっと過保護で、思春期になっても一人で出かけるっていうと大騒ぎされて」
「一人娘はかわいくて仕方ないだろうな」
「他の家はどうだったか分からないけど、うちはちょっと異常だったかなって今になって思うこともあります」

 そうか、と言って彼は注ぎ足したブランデーを口に含んだ。

 私には飲めそうにないそれは、彼にとても似合っている。大人だけが嗜むことを許されているようで、私は手にしていたチューハイに子供っぽさを感じた。


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